睡眠時無呼吸症候群の治療として飲み薬の治験を開始(スウェーデン)
睡眠時無呼吸症候群の治療としては、軽症から中等症であれば「マウスピース」、中等症から重症の場合は「CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)療法」が行われるのが一般的かと思います。
そんな中、スウェーデンにてオスポロット錠(成分名:スルチアム)を飲むことで、一部の患者に関して睡眠時無呼吸症候群が軽減したという初期段階の臨床試験データを公開しましたので概要を読んでみました。
オスポロット錠(スルチアム)の睡眠時無呼吸症候群に対する効能について
オスポロット錠は1963年に「てんかん治療薬」として医薬品登録された薬ですが、現在ではほとんど使用されておりません。
(理由はオスポロット錠単独服用では抗てんかん作用が疑問視され、フェニトインと併用するとフェニトインの血中濃度を上昇させることで抗てんかん作用が示されたため)
実際、私はオスポロット錠という名前を聞いたこともありませんし、目にしたこともありません。今回のスウェーデンの報告がなければ存在すら知らなかったと思います。
以下にオスポロット錠の睡眠時無呼吸症候群に対する効果について記します。
オスポロット錠を1錠服用すると、消化管で取り込まれた後に血液中をぐるぐるとめぐります。服用から3時間程度で最高血中濃度となり半減期は24時間程度の薬剤です。
オスポロット錠の薬理作用は「炭酸脱水素酵素阻害剤」です。
「炭酸脱水素酵素阻害剤」の作用について具体的に記しますと、細胞内において以下の反応を妨げる作用をもっています。
水(H2O) + 二酸化炭素(CO2) → 重炭酸イオン(H2CO3)
オスポロット錠を服用した方は、反応が右に進まなくなりますので、細胞内での水と二酸化炭素の量が増えていきます。
一般的に細胞は酸素を利用してエネルギーを作り、その残渣として二酸化炭素を吐き出しています。
つまり、オスポロット錠を飲むと、細胞内での二酸化炭素の量が増えることになります。
細胞は不要な二酸化炭素を血液中に送り出します。すると血液中の二酸化炭素は肺へ送られて、呼吸により体外へ排泄されるという仕組みとなっています。
ヒトは血液中の二酸化炭素量が増えると「苦しい」と感じて呼吸を促すシステムになっています。この原理は眠っている時も同じです。睡眠時無呼になりやすい方がオスポロット錠を飲むことによって、血液中の二酸化炭素濃度が増え、寝ていながらにして無意識に「苦しいかも?」と感じることにより呼吸が再開されます。この原理を利用して「睡眠時無呼吸」回数を減らそうということがオスポロット錠を飲む狙いとなります。
臨床データ結果
被験者
オスポロット錠200mg服用群:12人
オスポロット錠400mg服用群:25人
プラセボ服用群:22人
1時間当たりの無呼吸回数の変化
オスポロット錠200mg服用群:61.1回→40.6回
オスポロット錠400mg服用群:55.2回→33回
プラセボ服用群:53.9回→50.9回
1時間当たりの無呼吸回数が50%以下となった人数
オスポロット錠200mg服用群:3人(25%)
オスポロット錠400mg服用群:10人(40%)
プラセボ服用群:1人(5%)
オスポロット錠服用による副作用は頭痛、肌のピリピリ感、息切れが上げられていました。
筆者らは「オスポロット錠により睡眠時無呼吸イベントの回数が減少することが示唆されたが、ほとんど反応しなかった患者もいた。オスポロット錠は部分的な解決方法の一つにとどまるだけであり、CPAPのような治療法の代替療法となることはない」と述べています。
治験によるとオスポロット錠を1日1回就寝前に1回200mgまたは1回400mg服用した時にプラセボ(偽薬)と比較してどの程度睡眠時無呼吸症候群が改善したかを検討しています。