ペニシリン系禁忌の方に対するセフェム系薬剤の投与について(自分まとめ)
先日、小児の溶連菌に対してサワシリン(アモキシシリン)が10日分処方されたのですが、7日間服用した時点で薬疹がでたため内服が中止となった事例がありました。
サワシリンの内服が中止となり、フロモックスへ処方が変更されたという経緯がありました。
この件について、自分用のまとめを記載します。
薬疹が出るまでの時間
まず、第一点目「薬疹」が出るまでの時間についてですが、ペニシリン系の薬剤(アンピシリンやアモキシシリン)では他の薬剤と比較して発疹の副作用頻度が高いと言われており、服用後1時間以内の発症する即時型反応と、4日~2週間以内に発症する遅延型反応に分けられます。
即時型反応の症状としては、アナフィラキシー・蕁麻疹・浮腫が挙げられ、遅延型反応では、血清病・発疹(斑状・丘疹状・麻疹錠)などが挙げられます
即時型反応はIgE抗体に由来し、服用から15~30分程度で症状を呈するのに対して、遅延型はIgG抗体や補体やT細胞などの原因が挙げられ、発症時期も4日~と幅があります。
今回の事例は服用から7日後に発疹が報告され、その後の受診でアレルギー検査が実施されてアモキシシリンに対するアレルギー検査が陽性となりました。
遅延型反応だったのでしょう。
溶連菌の治療期間
溶連菌感染症の治療期間は、通常10日間です。(抗生物質の種類や症状によって期間は異なります。)
抗生物質を服用すると24時間程度で発熱や喉の痛みは軽減することが多いですが、完治を目的として10日間飲み切ります。
特に小児で抗生剤の服用を途中でやめてしまう、以下のような合併症を患う可能性がありますので、途中で良くなっても「飲み切る」ことを意識してください。
急性糸球体腎炎:顔や手足がむくみ、尿に血や蛋白が混じるようになる
急性リウマチ熱:関節、心臓、皮膚、神経系など全身の様々な臓器に炎症反応を示す疾患
今回の事例ではサワシリン(アモキシシリン)を7日間服用後、フロモックスへ変更となりましたので溶連菌の治療は完結しております。
ペニシリン系からセフェム系への変更について
フロモックス錠はセフェム系の薬剤に分類され、添付文書には以下のような文言が記されています。
特定の背景を有する患者に関する注意
「 ペニシリン系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者」
と記されているんですね。これはペニシリン系薬剤もセフェム系薬剤もどちらもβ-ラクタム環を母核とする抗菌薬という意味では、構造式が似ているから、このような記載があるんですね。
しかし、より詳しく調べてみるとサワシリン(ペニシリン系の抗生剤)で薬疹が出た方に対して、使用可能なセフェム系薬剤と使用してはいけないセフェム系薬剤があるという報告がありますので以下に記します。
構造式を見てみますと、今回取り上げているサワシリン(アモキシシリン)とフロモックス(セフカペンピボキシル)では、赤または青いラインを引いている部分の構造式が大きく異なるんですね。この場合は交差反応が2~3%と低いという報告がありますので、サワシリンで薬疹が出た方に対してフロモックスで同様の薬疹がでる可能性が低いと考えられています。
一方で、上記の図にお示ししますようにサワシリンとケフラール、ケフレックスの赤いラインの構造式が似ており、交差耐性は10%程度という報告がありますので、サワシリンで薬疹が出た方に対しては、ケフラール、ケフレックスの処方は避けた方が良いと言われています。
良く処方されるセフェム系の抗生剤として、メイアクトMS、セフゾンの構造式も一緒に添付します。
青いラインで記した部分の構造式が、サワシリンには類似しておりませんので、交差反応は2~3%と低いため、薬疹が出る可能性は低いと考えられます。
注意)交差反応が低いとはいえ必ずアレルギー反応が出ないとは言い切れませんのでご留意ください。
ペニシリン系とセフェム系の交差反応についての詳細は以下の内容を参考にさせていただきました。