おじさん薬剤師の日記

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熱中症 経口補水液 自分まとめ

気温上昇に伴う足の痺れ(自分まとめ)

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気温上昇に伴う足の痺れ(自分まとめ)

夏場の気温上昇によって下肢が痺れる症状が出た場合、様々な要因や疾患が考えられます。以下に主なものを挙げ、それぞれの可能性と注意点について説明します。

1. 熱中症に伴う神経症状

  • 原因: 高温多湿な環境下で体温調節機能がうまく働かなくなり、脱水や電解質異常が起こることで、神経が正常に機能しなくなる。

  • 症状: 下肢の痺れ、脱力感、めまい、頭痛、吐き気、倦怠感など。重症化すると意識障害やけいれんを起こすこともあります。

  • 注意点: 熱中症は放置すると命に関わるため、早急な冷却と水分補給が必要。症状が改善しない場合は医療機関を受診しましょう。

  • 食欲低下によるビタミンB1の摂取不足も要因の一つと考えられます。

2. 末梢血管障害

  • 原因: 高温によって血管が拡張し、血流が滞りやすくなる。もともと動脈硬化などの基礎疾患がある場合、血流不足による神経への影響が出やすい。

  • 症状: 下肢の痺れ、冷感、痛み、皮膚の色調変化(蒼白、紫色など)、間欠性跛行(歩行時にふくらはぎが痛くて止まらざるを得なくなる)など。

  • 注意点: 動脈硬化などの基礎疾患がある場合は、定期的な検査と生活習慣の改善が必要。症状が続く場合は血管外科を受診する。

3. 神経の圧迫

  • 原因: 長時間同じ姿勢でいる、締め付けの強い服装をする、体重増加などにより、神経が圧迫される。夏場は汗をかきやすく、むくみやすくなるため、神経の圧迫が起こりやすくなる。

  • 症状: 下肢の痺れ、痛み、感覚の麻痺、筋力低下など。

  • 注意点: 姿勢を変える、服装を見直す、体重を減らすなどの対策を行う。症状が改善しない場合は整形外科を受診する。

4. 椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症

  • 原因: 椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの疾患により、神経が圧迫される。夏場の気温上昇や運動不足により、症状が悪化することがある。

  • 症状: 下肢の痺れ、痛み、感覚の麻痺、筋力低下など。

  • 注意点: 症状が続く場合は整形外科を受診し、適切な治療を受ける。

5. 糖尿病性神経障害

  • 原因: 糖尿病による血管障害や神経への直接的な影響により、神経が損傷する。

  • 症状: 下肢の痺れ、痛み、感覚の麻痺、自律神経症状(発汗異常、消化器症状など)。

  • 注意点: 糖尿病の管理を徹底し、血糖値をコントロールすることが重要。症状が続く場合は内科や神経内科を受診する。

6. その他

  • 脱水: 脱水によって血液量が減少し、神経への血流が不足する。

  • 電解質異常: 発汗によりナトリウム、カリウムなどの電解質が失われ、神経の機能が低下する。

受診の目安

  • 症状が長引く場合(数日以上)

  • 症状が悪化する場合

  • 発熱、意識障害、けいれんなどの症状を伴う場合

  • 排尿・排便障害がある場合

医療機関の受診科

  • 内科

  • 神経内科

  • 整形外科

  • 血管外科

予防策

  • こまめな水分補給

  • 適切な塩分補給

  • 涼しい服装をする

  • 日陰で休憩する

  • 長時間同じ姿勢を避ける

  • 適度な運動をする

  • バランスの取れた食事を摂る

  • 基礎疾患の管理を徹底する

 

脱水症状、水分補給、腎機能維持に関する情報(自分まとめ)

 

気温上昇にともなって毎年注意が必要な体調変化として熱中症・脱水症状があります

 

熱中症や脱水症状の自覚症状を確認してみます。

・喉の渇き:体内の水分が失われているサイン

・発汗:体温を下げるために反応

・だるさ・倦怠感:動くことが億劫になり安静を促すサイン

・筋肉痛(筋肉の痙攣):水分不足・塩分不足により電解質がくずれ筋肉の機能が損なわれる

・尿量減量、尿の色が濃くなる:体内の水分を維持するため腎臓が尿を濃縮している

・頭痛:血流悪化により脳の血管が拡張と収縮を繰り返し、片頭痛様症状を呈します

・吐き気:消化器系の機能が低下しているサインです

 

上記のような熱中症・脱水症状の自覚症状を経て集中力の低下・意識障害・高体温・痙攣といった症状に至ります。

 

外出時だけでなく自宅の中でも室温が高いと熱中症・脱水症状をまねきますので水分補給を行うと共に、上記のような自覚症状を念頭にいれておくことが大切です。

 

ここまでが、外気温によって水や塩が汗として抜かれたことによって生じる自覚症状についてです。

 

次に熱中症に罹患している時に、体内で生じている水の移動について確認してみます。

 

熱中症

  1. 血管内液の減少

最初に失われるのは血管内を流れている血漿です。発汗や呼吸によって水分の喪失が増えると、血漿の水分が減少し、血液が濃縮されてドロドロの状態になります。これにより血流が悪化し、酸素や栄養の供給が滞ることで、めまいや倦怠感が現れます。

 

  1. 間質液からの補充

私たちの体は血流を維持することで体の各組織に栄養や酸素を供給していますので、血流を維持することが最優先となります。そのため血管内液が減少すると、体はそれを補うために間質液(細胞間の水分)を血管内へ移動させます。これにより、一時的に血流が改善されます。しかし、間質液の減少が進むと皮膚の乾燥や弾力の低下が見られるようになります。

 

  1. 細胞内液の移動

細胞と血管の間を満たしている間質液が減少すると、次に細胞内液が間質液へ移動し、細胞内の水分が失われていきます。これにより、細胞の機能が低下し、筋肉のけいれんや意識障害などの深刻な症状が現れることがあります。

 

私たちの体の中では、熱中症に罹患している時に、血流を維持するために上記のような水の移動を行って生命活動を維持しています。

 

2025年6月1日より、職場で適切あ熱中症対策を取ることが企業に義務付けられます。厚生労働省は2025年4月15日に熱中症対策を罰則付きで事業者の義務とする労働安全衛生規則改正省令を交付しました。

2025年6月1日:職場における熱中症対策の強化について

 

さて、話はここからです。体の中の血流維持という観点で言いますと、熱中症に罹患した状態と、過剰に塩を摂取した状態というのが一時的に似通ることをご存じでしょうか。

 

過剰な塩分摂取

外食へ行ってラーメンスープを飲みほした後のように、塩分を過剰に摂取した後というのは、血液中のナトリウム濃度が一時的に上昇します。浸透圧の原理によって、体内の水分が血管内に引き込まれます。この場合の水分は主に以下の場所から調達されます。

 

間質液 (かんしつえき):

 

細胞と細胞の間、および細胞と毛細血管の間を満たしている液体を間質液と呼びます。これは細胞外液の一種です。血管内の浸透圧が上昇すると、まずは間質液から水分が血管内に引き込まれます。

 

 

細胞内液 (さいぼうないえき):

 

私たちの体内の水分のうち、約2/3は細胞の「中」に存在しています。これを細胞内液と呼びます。

 

血液中のナトリウム濃度が高まると、細胞内外の浸透圧差を解消しようとして、細胞内の水分が細胞膜を通って細胞の外へ、そして最終的に血管内へと移動します。これにより、私たちの体は血流を維持するわけですが、その代わりに一時的に細胞がわずかに脱水状態になることがあります。

 

つまり、血液のナトリウム濃度を薄めるために、主に「細胞の中」と「細胞と血管の間」から水分が血管内に移動するという仕組みとなっています。

 

熱中症のときも、塩を大量に摂取した後も、“細胞内の水”が失われますので、水やOS-1、果物や野菜といった水分と電解質を摂取することで、細胞内・間質液を補充して症状の回復を図ることになります。

 

さて、この話のキモとなる部分はこれからです。

 

この記事は脱水症状、水分補給、腎機能維持に関する情報というテーマで文章を構成しておりますので、最後に「熱中症」および「塩を大量に摂取した後」の腎臓への負担についてお伝えします。

 

熱中症に罹患して、体の中の水分が一時的に減少してしまうと、腎臓に流れる血流量が減少します。

 

また、血液は腎臓に酸素や栄養をおくって腎細胞を維持するはたらきを担っていますが、腎増への血流量が低下してしまうと、腎機能が低下してしまう恐れがあります。

 

また、腎臓は老廃物を排出する働きを担っている臓器ですので、尿量が減少してしまうと、体の中に老廃物がたまってしまって、一時的には透析をうける必要に迫られるケースもあります。

 

つまり、体からの水が失われて血流が不足するという状況は、腎臓の細胞が正常に働かなくなるリスクをはらんでいると言えるわけです。

 

次に、塩を大量に摂取した後の腎臓の負担について考えます。

 

塩分を摂取すると、血液中のナトリウム濃度が上昇します。それを薄めるために細胞内液や間質液から水を血液中に移動しますので、血液中を流れる水の量が一時的に上昇して血圧が上がります。

 

腎臓は血液をろ過して余分なナトリウムを尿中に排泄する役割がありますので、腎臓を流れる血液の量が増えることで、腎臓の負担が増えます。

 

塩分の過剰摂取が一過性であれば、腎臓への負担も単回で済みますが、継続的な塩分過多の生活を送っていると、腎臓への負担が経常的となり腎機能の低下を招く恐れがあります。

 

さらに、ナトリウム濃度が高くなると、一度に排泄しきれないナトリウムと水分を保持する必要がありますので、下肢などに浮腫みが生じるケースがあります。特に腎臓の機能が低下している方の場合、余分な水分を排出する能力が低下しているため、体内に水分がたまる頻度が増えていきます。

OS1

まとめ

 

熱中症も過剰な塩分摂取も細胞内や間質液の水分が血管内に移動するという点では生理的な水の移動は一緒

 

熱中症:体内の水が失われる

過剰な塩分摂取:塩を薄めるために体内の水の量を増やして対処する

 

しかし、上記のように体の中の水の量は真逆の状態となります。

その結果、私たちの体の中の“塩と水“を管理している腎臓には真逆のダメージを与えることになりますが、どちらの場合も腎臓に負担となることをご理解ください。

 

尚、上記の話は正常な腎機能の方を想定した話であり、腎機能が低下している方や、透析を受けている方には当てはまらない内容がありますのでご留意ください。

 

また、水を飲むことは一般的に良いと言われていますが、脱水状態でないにも関わらず1日3L以上の水を飲むことや、短時間に1L以上の水を飲むことは水中毒(電解質異常)となる恐れがありますので、水分補給にはバランスが大切でることをご留意ください。

-熱中症, 経口補水液, 自分まとめ
-ラーメンスープ, , 塩分過多, 減塩, 熱中症, 経口補水液, 脱水, 高血圧

執筆者:ojiyaku

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