デパケン錠200mgとデパケンR錠200mgの取り間違い過誤を防止する方法
薬剤師会による調剤過誤関連の報告例・ヒヤリ・ハット事例集・厚生労働省のインシデントに関する医薬品情報集計には
デパケン錠200mgとデパケンR錠200mgの取り間違い過誤が何度も記されています。
例
デパケン錠200mgと処方箋に記されているにもかかわらずデパケンR200mgを患者様へお渡ししてしまった。
デパケン錠200mg:普通錠
デパケンR錠200mg:徐放錠
上記2剤は、徐放性(溶ける速度)の違いがあるにもかかわらず、どちらも規格が200mgと同じであるために、非常に調剤過誤が生じやすい薬剤となっています。両規格があるこをわかっているのに間違ってしまいます。
今回は、どのようにすればデパケン錠200mgとデパケンR錠200mgの取り間違いを防ぐことができるかについて検討してみました。
結論
用法・処方箋の文字数の違い(1文字鑑査)を注意喚起とする
調剤者・鑑査者は「刻印があーる(有る)(R)」と心でささやく
以下、経緯・考察・検討です。
デパケンとデパケンRを見た目で区別しやすいようにデパケンRを太字で表記します。
調剤過誤パターン
レセコン入力および調剤のどちらも間違えてしまうパターン
処方箋に「デパケン錠200mg 2T/2×30TD」と普通錠が記されているにもかかわらず
レセコン:デパケンR錠200mg 2T/2×30TDと入力し
調剤:デパケンR錠200mgを60錠ピッキングする
入力も調剤も間違えてしまうパターンの場合、ミスゼロ子やポリムスといったピッキング支援システムを導入している店舗であっても調剤過誤が生じます。
(ピッキング支援システムはレセコン入力が正しいという前提でピッキングを支援するシステムであるため)
また、初処方時や新患入力にて、レセコンも調剤も間違えてしまったパターンの場合、患者様が気づくことはできません(薬情の薬の写真と現物が同じであるため)。処方医も気づくことはできません。この場合、翌来局時のレセコン入力者・調剤者・鑑査者のいずれかが、Doと思い込まずに処方箋を確認して気付く以外、調剤過誤に気付くことができません。
レセコン入力は正しく、調剤を間違えてしまうパターン
処方箋に「デパケン錠200mg 2T/2×30TD」と普通錠が記されているにもかかわらず
レセコン:デパケン錠200mg 2T/2×30TDと入力し
調剤:デパケンR錠200mgを60錠ピッキングする
薬の説明書きに載っているデパケン錠200mgの写真と60錠ピッキングされたデパケンR200mgの外観が異なるため、鑑査者または患者様が気づく可能性があります。また、数ヶ月に一度の薬局棚卸しのときにデパケン錠200mgとデパケンR錠200mgの在庫が、理論在庫と実在庫でズレるため、気づくことがあります。
ということを考えますと、“レセコンおよび調剤のどちらも間違えるパターン”が非常に発見しにくい過誤であるため、長期的な調剤過誤となる可能性があります。
デパケンR錠200mgとデパケン錠200mgの外来使用量(H28年4月~H29年3月)
デパケンR錠200mgとそのGEの年間外来使用量:3億3731万錠
デパケン錠200mgとそのGEの年間外来使用量:5070万錠
年間外来使用量だけを言いますと、デパケンR200mgが87%、デパケン錠200mgが13%という使用量です。実際に調剤薬局でデパケンR200mgまたはデパケン錠200mgを在庫している割合も同様の率かと推測します。これほど使用率に差がある現状を踏まえますと
- :デパケン錠200mgと処方箋に記されているのにデパケンR錠200mgを調剤した
- :デパケンR錠200mgと処方箋に記されているのにデパケン錠200mgを調剤した
調剤過誤が生じるケースは圧倒的に①の可能性が高いと考えます。
デパケン錠200mgという処方をデパケンR錠200mgと読み間違えないようにする対策
処方箋にはデパケン錠200mgと記されている。
「R」が付いていないにも関わらず「R」が付いていると思い込んでレセコン入力・調剤・鑑査を行うため調節過誤が発生しています。
用法を確認する
処方医の考えによって、例外は多数あるのですが、添付文書上では
デパケン錠200mgの用法は1日2回または1日3回
デパケンR錠200mgの用法は1日1回または1日2回(徐放錠は飲む回数が少ない)
ですので、処方箋に“デパケン”の文字をみつけたら“R”が付いているか付いていないかに着目すると同時に用法が1×または3×となっているかどうかを確認します。
“1×ならばRあり”、“3×ならばRなし”という可能性が高いためです
2×となっている場合は用法から「R」あり・なしを判断することはできません。
この方法は用法を確認することで、「R」のあり・なしを意識するという対策です。
文字数を確認する
デパケン錠200mgまたはデパケンR錠200mgを処方箋に記す場合
商品名(先発)
デパケン錠200mg
デパケンR錠200mg
一般名処方
【般】バルプロ酸Na錠200mg
【般】バルプロ酸Na徐放錠200mg
商品名(ジェネリック)
バルプロ酸Na錠200mg「○○」
バルプロ酸ナトリウムSR錠200mg「アメル」/バルプロ酸Na徐放B錠200mg「トーワ」
私は神経内科の門前薬局で、レセコン入力を行うスタッフに入力時の注意点を確認したところ
「文字数を数えています」
と言っていました。
デパケン錠:5文字
デパケンR錠:6文字
だそうです。
この方法は、デパケン錠200mgまたはデパケンR錠200mgが同程度に、よく処方される調剤薬局では有用かもしれませ。しかし9割以上の確率でデパケンR200mgが処方される薬局では・・・採用しにくい方法かもしれません。
通常の薬局では9割近くの可能性で「デパケンR錠200mg」を調剤している現状で、極稀に面の処方箋として「デパケン錠200mg」が飛び込んできたときに、このタイミングで正しく「デパケン錠200mg」をレセコン入力・調剤することが、今回のテーマの本質です。
調剤・鑑査時「R」は「アール(有る)」と心の声でささやく
対策とは到底言えないのですが、私が行っている方法を記します。
デパケンR錠200mgには錠剤に「KH114」と刻印されています。
デパケン錠200mgの錠剤には刻印がありません
(PTPシートにはKH102と記されているのですが、錠剤自体には刻印はありません)
そこで、“デパケンまたはデパケンR”と記された処方箋の調剤や鑑査を行う際は、「R」は「刻印がアール(有る)」と心の声でささやきながら作業をするようにしています。
1:処方箋を見る
2:デパケンまたはデパケンRと記されている
3:Rは刻印がアール(有る)とささやく
4:PTP調剤を行う際、PTPに刻印があるかどうか確認する→刻印がある「R」錠を調剤した
5:再度処方箋を見直して「R」が付いていることを確認する
鑑査の場合はPTP調剤であっても1包化調剤であっても刻印鑑査を行います。刻印が付いていることを確認後、再度処方箋に「R」がついていることを確認してから患者様へお薬をお渡しします。
(注意:デパケン錠は1包化できません)
まとめ
外来処方量はデパケン錠200mgが13%とデパケンR200mgが87%で圧倒的にR錠が多い
デパケン錠200mgと処方箋に記されているにも関わらずデパケンR200mgを調剤する過誤が多い
用法・文字数・「Rがアール(有る)」など、チェックポイントを自分の中で作る
職員にはデパケン錠200mgとデパケンR錠200mgという薬があることを周知徹底する