末梢循環障害(手足のしびれや冷感)や腰部脊椎管狭窄症で非常に多用されるオパルモン錠(プロレナール錠)またはそのジェネリック医薬品(リマプロストアルファデクス)について理解を深めるために調べてみました。
オパルモン(プロレナール)錠
末梢血管拡張作用による血流量増加作用および血小板凝集抑制作用を有するプロスタグランジンE1誘導体製剤
上図がプロスタグランジンE1(PGE1)とオパルモン錠の構造です。非常に酷似した構造をしていることがわかります。このため本来生体内にあるプロスタグランジンE1(PGE1)と類似構造をもつオパルモン錠を服用すれば手先や足先の末梢循環障害改善作用や血流量の増加、皮膚温上昇作用および血小板凝集抑制作用が期待できることがうかがえます。
具体的な報告例としては、腰部脊椎管狭窄による神経根圧迫による下肢痛、しびれ症状の改善報告や、主血管の数値であるABI値改善報告
や、保存療法中の腰部脊椎管狭窄症患者による神経性間欠跛行症状を患者側から見た主観評価など、複数の報告があります。
オパルモン錠の注意点
上図がオパルモン錠の効果時間です。図をみるとオパルモン錠の効果時間が非常に短い事がわかります。具体な時間を記載しますと、服用後20分後には効果が最大となり、服用30分後には半減期を迎え、服用2時間後には血中濃度が非常に低くなります。
添付文書の用法通りに1日3回使用した場合、服用間隔を8時間、半減期を0.5時間と考えて定常状態の有無を計算してみると
8(投与間隔)÷0.5(半減期hr)=16
16>>3(または4)
オパルモン錠の計算値は16ですのでこの薬には定常状態はありません。血液中のオパルモン濃度は服用後1.5~2時間ほどで消失しますが、その効果についてはどうなのでしょうか。インタビューフォームで服用後、血中濃度消失後の効果について確認してみました。
オパルモン錠の血中濃度消失が速い理由
もともとプロスタグランジンE1(PGE1)製剤には注射用製剤しかありませんでした。慢性疾患である腰痛や末梢血管障害に対して注射用剤のみというのは、自己投与ができない観点から非常に使い勝手が悪い製剤でした。そこでより簡便な内服薬による慢性疾患の治療法として確立したのがオパルモン錠(内服薬)でした。
しかし、オパルモン錠は、生体にもともとあるPGE1と同様な構造であるために、脂肪酸という側鎖を有しています。(図の赤線部分)この脂肪酸部分(1価不飽和脂肪酸部分)は食事から得られる脂肪酸(脂分)と同様の構造をしているため腸から吸収された後、速やかに分解が行われて、ごく少量のエネルギーへと形を変えます。分解が進むと薬としての効き目が低下してしまうためオパルモン錠の効果時間は必然的に短くなってしまうわけです。
オパルモン錠の効能効果を大別すると血管拡張作用と血液凝固抑制作用という作用に分けられます。
血管拡張作用による血流改善・皮膚温度上昇効果に関しては服用3時間後で末梢(足先)皮膚温度上昇のピークとなります(飲む前と比較して2度ほど上昇する)。また、血液凝固抑制作用に関しては服用4~6時間後に血液凝固抑制率のピークを迎えます。このためオパルモン錠の作用は、その作用部位により効果時間が異なることが示唆されています。
オパルモン錠(プロレナール錠)を初めてお渡しするときに患者さんへお伝えすること
このお薬は血管を広げて血液の流れをよくする効果と、血液をサラサラにする効果があるお薬です。手先や足先、腰部などの血管も広げることができるので患部の循環を改善する効果が期待できます。注意点としては、効き目は早いのですが、効果時間は作用部位により異なりますので1日3回飲み忘れずに使用を続けることが大切です。自己調節せずに使用しましょう。