オルメテック錠(普通錠)の販売中止となった理由を推測する
オルメテック錠(普通錠)の10mg・20mg・40mgの販売が諸般の事情により2017年3月末日をもって中止となり、同一有効成分の口腔内崩壊錠(OD錠)へ移行することとなりました。尚、オルメテック5mgについては普通錠の販売が継続されるとのことです。
第一三共が普通錠の販売を中止して、OD錠のみの販売にシフトするに至った理由について推測してみます。
○2017年12月にジェネリック医薬品が発売するため
この理由につきるでしょう。
ジェネリック医薬品が発売される見通しとなった時点で、先発会社の戦略としては、ジェネリック医薬品が発売されるより前に普通錠とOD錠を併売することで、市場拡大や普通錠からOD錠へ変更することへの利点を強調する戦略を目にしたことがあります。(エックスフォージ配合錠など)
第一三共は普通錠の販売を中止して、OD錠一本で市場を維持する戦略にでました。オルメテック錠の力価および医療機関への信頼度を考えると、オルメテック錠およびOD錠の市場に変動はないと考えたのでしょう。製薬会社の利点としては、普通錠を製造していた製造工場ラインを中止して、他剤に使いまわすことができるというメリットがあります。
追記:2017年2月15日、第一三共の子会社である第一三共エスファがオルメテック錠/OD錠、ミカルディス錠、クレストール錠のAG薬の製造販売商品を取得しました。先行発売型のAG薬は、ある程度の市場を確保できるイメージがありますので(カンデサルタン「あすか」、モンテルカスト「KM」など)、安定供給のために製造ラインを確保することは医療機関への信頼につながります。
さらに、私の推測ですが、第一三共としては2017年12月に発売されるオルメテックのジェネリック医薬品の品目数が減る可能性も視野にいれているように思えます。
ARBの違いを代謝経路、インバースアゴニスト、尿酸低下作用、インスリン抵抗性改善作用などの複合要素から検討する
2016年6月に発売されたジプレキサ錠を例にとって考えますと、ジプレキサには普通錠とザイディス錠があります。ジェネリック医薬品を発売した会社数は20数社ですが、その品目数は普通錠・OD錠を含めて120品目を超えました。その結果、ジェネリック医薬品発売後、半年以内のジェネリック医薬品への変更率というのは一般的に20%もあればいい方と言われている中で、ジプレキサからジェネリック医薬品(オランザピン錠)へ変更されている率は2016年9月時点で30%を超えています。(卸およびメーカーからの情報より)
第一三共エスファ オーソライズドジェネリック事業強化について
あくまで私の推測ですが、販売するジェネリック医薬品メーカーおよび品目数が多ければ多いほど、先発からジェネリック医薬品へ移行する率が高いように思われます。「オランザピン錠」と処方せんに一般名処方が記載されていれば、先発医薬品であれば普通錠しか選択できないのに対して、”ジェネリック医薬品であれば普通錠またはOD錠を患者さんが選択でき、かつ価格も半額”というメリットは非常に患者さんにとって有益に感じます。
話をオルメテック錠に戻しますと、先発品の普通錠の販売が2017年3月に中止され、それ以降はOD錠しか市場に出回らなくなります。OD錠が市場に出回り医療機関および患者さんはOD錠が当たり前という感覚へと至っていくものと思われます。それから9か月後に発売されるジェネリック医薬品のラインナップはどうなるかはわかりませんが、普通錠とOD錠を併売するメーカー数は少なくなる可能性があります。
オルメテック錠(OD錠)はヒット商品ですので、おそらくジェネリックを発売する会社数は20社を超えるでしょう。しかし、「その品目数はジプレキサの時のように120品目を超えることはない」という第一三共の狙いがうかがえます。
ジプレキサ2.5mg、5mg、10mgという3規格を20社のジェネリックメーカーが発売すると60品目
ジプレキサザイディス2.5mg、5mg、10mgという3規格を20社のジェネリックメーカーがOD錠を発売すると60品目
単純計算ですが120品目となります。
オルメテック錠は5mg、10mg、20mg、40mgがありますので、普通錠とOD錠を20社のジェネリックメーカーが発売すると考えると普通錠80品目、OD錠80品目で単純計算では160品目が発売されることになります。
しかしジェネリック品がOD錠しか発売されないとすると半分の80品目に減ります。競合商品が半減すると捉えることもできるわけです。
その結果、市場規模が変わらないとすると、第一三共の狙いであるジェネリック医薬品への移行率を低く抑えることができる可能性がみえてきます。
あくまで推測ですので2017年12月以降になってみなければ市場動向はわかりませんが、非常に興味深い先発メーカーの戦略のように感じられます。
さらにオルメテックOD錠のにおいの原因である揮発成分が高温多湿条件下でメトホルミンやカモスタットを紅色に変色させることも健在です。
ですので、オルメテック普通錠からOD錠へ変更後も、これまでと同じ注意点でよいかと思います。