小腸において乳酸やピルビン酸がマクロファージを活性化して病原菌をやっつける仕組み
消化管における免疫応答の一端が明らかとなったようです。大阪大学の研究チームは、腸内細菌が作り出す乳酸やピルビン酸が、腸壁に存在するマクロファージの樹状突起を活性化させる働きがあることを英科学雑誌natureの電子版に報告しました。
概要
小腸は長いホースのような構造をしており、その管腔内(ホースの管の空洞部分)には乳酸菌などの腸内細菌がたくさん生息しています。その乳酸菌が作り出す“乳酸”や“ピルビン酸”という物質がたくさんあると、腸壁(筒状構造の小腸の内側の壁)の内部に存在するマクロファージという免疫細胞が樹状突起と呼ばれる手を腸管に向けてぐぐぐーっと伸ばすことが可能となり、腸管に存在する病原菌を効率的に取り込むことが明らかとなったという報告です。
ピルビン酸・乳酸の役割
乳酸菌などの腸内細菌は乳酸やピルビン酸を作り出します。乳酸菌やピルビン酸は腸壁内部に存在するマクロファージの表面にあるGPR31と呼ばれる受容体に触れることで、マクロファージを活性化します。活性化されたマクロファージは腸管に向けて樹状突起と呼ばれる手をぐぐーっと伸ばして病原菌を取り込むことが確認されました。
11種類の腸内細菌を飲むことが“がん治療”へつながる可能性について
マウスでの実験
マウスに乳酸・ピルビン酸を飲ませて、ヒトの病原菌であるサルモネラ菌を投与して40日間観察したところ、乳酸菌とピルビン酸を与えたマウスは100%生存しました。しかし、GPR31を欠損させたマウス(ピルビン酸や乳酸があってもマクロファージが活性化しないマウス)や乳酸・ピルビン酸を与えないマウスでは生存率が低下しました(50%以下)
実際に、大阪大学のホームページにある写真にはマウスに3週間、乳酸やピルビンを経口投与したところ、小腸絨毛においてマクロファージが伸ばす樹状突起(手)の数が増えている写真が掲載されています。
筆者らは「ピルビン酸や乳酸は免疫反応を促進する事が出来るため、経口ワクチンの有効性を改善するために利用できます。マクロファージ表面にあるGPR31(受容体タンパク質)は腸内病原体をやっつけるための治療として有望な標的になりえます。」とまとめています。