厚生労働省「咳止めと去痰約薬の供給量の増加」を経済対策に盛り込む。薬価上昇?(2023/10/19)

厚生労働省「咳止めと去痰約薬の供給量の増加」を経済対策に盛り込む。薬価上昇?(2023/10/19)

厚生労働相の武見敬三氏は2023年10月18日の臨時会見で鎮咳薬と去痰薬が供給不足になっている問題についての救急対応を表明しました。

主要メーカー8社に供給量の増加を要請し、年内は他の医薬品生産ラインからの緊急融通や在庫の放出などの対策を行い鎮咳薬1100万錠、去痰薬1750万錠の供給増加の方針を説明しました。供給増を要請した8社は市場シェアの大きい会社と説明していますが、具体的な社名は公表されていません。

また、政府が検討している経済対策にも盛り込みたい意向を示しており、供給不足かつ不採算品目については「薬価上の対策も検討していく」と述べました。

政府の方針としては、9月末時点と比較して年内の増加率は10%増を見越しているということです。

私の勤務している薬局でも鎮咳薬の入荷は壊滅的ですね。メジコン錠は全く手に入らなくなりました。アストミン錠、アスベリン錠は細々と入荷できるかできないかと言った状態です。

直近では、頼みの綱の「咳を抑える吸入薬」でさえ入荷が遅延している状態です。何とかしてほしいものです。

 

日本医師会常任理事「入手困難品目の3割は「通常出荷」(2023/10/10)

日本医師会が会員に「医薬品供給不足」について緊急アンケートを行った結果

院内処方で入手困難と回答があった品目のうち「通常出荷」としている品目が3割あることがわかりました。

宮川常任理事は「何をもって”通常”と言っているのか定義がはっきりしない」とコメントを出しています。

院内処方で入手困難だった品目のトップはメジコン錠(600件)、次いでトルリシティ(241件)、オーグメンチンチン配合錠(223件)、PL配合顆粒(215件)、フスコデ配合錠(205件)としています。

 

院外処方で薬局から在庫不足と報告された品目のトップもメジコン錠(1304件)、次いでアスベリン錠(687件)、フスコデ配合錠(531件)、トルリシティ(464件)、アストミン錠(458件)となりました。

いずれも、鎮咳剤の入手が難しい状況となっています。

 

日本医師会常任理事「AG薬は競争を阻害している。排除すべき」(2023/10/8)

日本医師会の宮川常任理事は2023年10月8日の会見で医療用医薬品の供給問題に関して以下の提言を行いました。

「オーソライズドジェネリック(AG)について、明らかに1物2価だ。後発医薬品の健全な競争を阻害している。薬価を高止まりさせる恐れがある。排除すべきだ」

「長期収載品依存やAGの寡占を助長している。先発医薬品企業がAGを開発しなくなるように、強いペナルティーが必要」として、AG薬の存在を強く非難しました。

1物2価とは、同じ商品を同じ時期に異なる価格で販売することを意味します。

製薬メーカーは1社で全く同じ商品を2つ販売してはいけないというルールがあります。

例えば過去の話としては、サイレース錠を販売している「エーザイ」がサイレース錠と同じ成分である「ロヒプノール錠」の販売権を中外製薬から販売移管されたことがあります。この際、サイレース錠とロヒプノール錠は同一成分であり、サイレース錠の方がわずかに薬価が高く設定されていましたので、ロヒプノールが販売中止となりました。

また、同様の例としてジェネリックメーカーの日医工がエーザイの子会社の「EMEC」を買収し、重複する成分が販売中止となった事例があります。

上記のルールを回避するため、先発メーカーは子会社を作り、子会社がAG薬を製造販売するという体(てい)を取ることで、形式的に1物2価を回避している実情があります。

また、同じ会見内で「売り逃げにはペナルティーを!」という提言も行われました。

新規後発医薬品の薬価は先発品の半額程度の薬価が設定されます。その後、継続的に販売を続けると毎年薬価は少しずつ下がっていきます。ある程度薬価が下がった時点で供給量を減らす「売り逃げ」が問題視されています。

健全な流通や競争を阻害する企業をふるいにかけるべきであり、国はあり方を含めて具体策を考えるべき」と意見を述べています。

実際、薬価は毎年引き下げられており、1錠あたり10円以下の医薬品を製造販売し続けることは製薬メーカーにとって足かせとなっている実情があります。

2023年9月21日に、日本医薬品卸売業連合の会長は中医協薬価専門部会にて「薬価20円未満の医薬品の安定確保すべき医薬品の薬価引き上げを検討していただきたい」と訴えを行っています。

高い薬や独占している薬は排除されるべきであるものの、安すぎる薬を販売し続けることは経営負担となるため、薬価引き上げが求められている実情を垣間見ると、ジェネリック医薬品を取り巻く状況の改善案は容易ではないことがうかがい知れます。

 

処方薬の患者さん負担をふやして新薬開発の財源を確保?(2023/10/2)

厚生労働省は、医療機関から処方される一部のお薬について、患者さんの負担額を増やす方向で検討することを開示しました。

1年後の2024年末までに考えをまとめることとなります。

その背景として、岸田総理が厚生労働大臣に対して、「新薬の開発を後押しするための財源を捻出するよう」指示をだしました。

その指示をうけて、厚生労働省は2023年9月29日の社会保障審議会医療保険部会において、医療機関から処方される薬の患者さん負担を増やすことについての議論を行うことで財源の確保を検討する運びとなりました。

現在の患者さん負担割合は薬の価格の1~3割ですが、話し合いの中では「一定額を上乗せする案」や「特許が切れた薬や類似の市販品がある薬の負担額を増やす案」などが話し合われました。

これに対して、「新薬の開発を進めても保険財政への影響を抑えるために見直しを進めるべきだ」という意見や「患者の負担が増えて必要な医療を受けられないことがないように丁寧に議論すべきだ」という指摘も出されました。

yakkyoku

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業